椎津みゆき

犬の行動学と保護犬福祉分野の第一人者スー・スターンバーグに師事し、20年以上アシスタントとして活動。保護犬の生活の質を尊重し、安全で責任ある譲渡を推進してきました。スターンバーグが開発した「Training Wheels」「Train to Adopt」「Assess-A-Pet」など革新的プログラムの普及に携わり、各アニマルシェルターで現場スタッフが犬の行動を正しく理解できる体制づくりに貢献しています。アメリカ南部の犬輸送事業の責任者として気質評価や搬送を担う。ニューヨークでミックス犬と暮らし、ペットを取り巻く諸問題に取り組み、地域社会と動物がよりよく共生できる環境づくりを続けています。 |
11月23日(日)10:00~11:50
1. 保護犬をめぐる課題とアニマルシェルターの未来 ― アメリカの実践事例から見えてくるもの
アメリカのアニマルシェルターの現状から見える保護犬を取り巻く課題には、日本とも多くの共通点があります。日本で今起きている諸問題は、すでにアメリカで経験されてきたものです。本講演では、アニマルシェルター・レスキュー団体・フォスターファミリーの違いや役割、地域ごとに異なる犬の特徴などを紹介します。また、インターネットを通じた譲渡や地方から都市部へのトランスファー譲渡の弊害、ノーキルシェルターと安楽死の現実にも触れます。さらに、ペット放棄や個体数過剰を防ぐ地域支援プログラム「Training Wheels」など、アメリカで実践されている取り組みを紹介しながら、私たちが目指すべきアニマルシェルターの姿を考えます。地域社会とのつながりを重視し、シェルターを「収容や放棄の場」ではなく、動物と人を結びつける希望の拠点、問題解決の場とするための実践的な考えるきっかけを共有します。
11月23日(日)13:00~14:50
2. Assess-A-Petを通じて見る犬の本質 ― 気質評価から行動理解へ、新しいトレーニングアプローチ
犬の問題行動は「しつけ不足」だけで語ることはできません。背景には、その犬が生まれ持つ気質が大きく関わっています。「Assess-A-Pet(AAP)」は、犬の気質を客観的かつ体系的に評価するために開発され、アニマルシェルター現場では譲渡判断や安全性の確保に活用されてきました。本講演では、AAPが犬の社交性や攻撃性の兆候をどのように捉え、実際の現場で役立てられてきたかを紹介します。家庭犬トレーニングに応用することで、犬の行動を表面的な問題としてではなく、気質理解を通じて長所と課題を把握し、飼い主への助言や環境調整を具体的に伝えることができます。個々の犬の気質を手がかりにすることで、飼い主が犬とのコミュニケーションを理解しやすくなり、共に暮らす日常をより豊かにします。
11月23日(日)15:00~16:50
3. 「Train to Adopt」による行動改善と適応力 ― 学ぶ喜びから家庭犬トレーニングへの応用まで
アニマルシェルターでは、行動問題を抱える犬の増加や長期収容によるストレスが深刻な課題です。これに対応するために開発された「Train to Adopt」プログラムは、第一印象を改善して譲渡率を高めるだけでなく、犬が自分で考え行動を選ぶ経験を重視し、学ぶこと自体を楽しむ姿勢を育てることで、精神的刺激を与え、心身の安定と生活の質の向上を実現する体系的な仕組みです。また、犬が学ぶ経験は新しい飼い主との関係づくりを円滑にし、家庭での適応力も高めます。プログラムはトレーナーだけでなく、アニマルシェルターのスタッフやボランティアが共通して日常業務に取り入れられるよう設計されており、さまざまな保護形態にも柔軟に対応可能です。本講演では、このプログラムの目的・方法・成果を紹介し、そこから得られた知見を一般家庭犬のトレーニングに応用する具体的な方法も提示します。 |
つねいし みつこ

ドッグトレーナー
D.I.N.G.O.認定インストラクター(~2025)
JAPDT 正会員
・プライベートレッスン・パピーパーティ・オンラインレッスンetc.
・家族と犬がお互いに心地よく暮らせるサポートをメインに行なっている
・2017年よりペットショップにて社会化トレーニングのアドバイザーを行う(現在5店舗)
・2024年より子犬の社会化についての、セミナーや講演を行なっている |
11月21日(金)15:00~16:50
子犬と家族をつなぐ大切な一歩について
~ショップスタッフが行なっている社会化のお話~
四国にある、5店舗のペットショップで行なっている、
子犬達への社会化の取り組みについてお話をさせていただきます。
(前半)
・お世話の中で行う『安心』と『快適』経験
・グラフで見る、人の手と子犬の関係について
(後半)
・子犬を家族につなぐ取り組みについて
・子犬と家族にとっての社会化とは?
・トレーナーとしてスタッフから学んだこと
今回の内容に、専門用語はゼロです。
どなたにもわかりやすい内容になっています。
子犬に限らず、ペットを家族につなぐ機関の方々にも、
少しでもご興味をもっていただければ幸いです。 |
本庄 萌

長崎大学環境科学部 准教授
京都大学法学部卒
米国ルイス・アンド・クラーク・ロースクール環境法LL.M.課程、動物法LL.M.課程修了
一橋大学大学院法学研究科博士後期課程修了(比較法)
主な研究業績
『世界のアニマルシェルターは、 犬や猫を生かす場所だった。』(2017、ダイヤモンド社)
『動物福祉と法:欧米における動物実験規制』(2024、成文堂)
「EUにおける畜産動物福祉法:採卵鶏指令を例に」(『EU法研究』第15号、2024)
“Japan: Case of Aigo,” in Anne Peters, Kristen Stilt and Saskia Stucki (eds.), Oxford Handbook of Global Animal Law, Oxford University Press, 2026 (刊行予定)など |
11月21日(金)13:00~14:50
動物法における動物福祉
・動物福祉とは
・動物福祉の発展
・国内外における動物福祉関連法政策
・日本における課題と可能性 |
水越 美奈

日本獣医生命科学大学獣医保健看護学科 教授
(人と動物の関係学).
付属動物医療センター行動治療科担当.
獣医師,博士(獣医学), 獣医行動診療科認定医
(公社)JAHA(日本動物病院協会)認定家庭犬しつけインストラクター
(一社)日本獣医動物行動学会 会長
(公社)JAHA(日本動物病院協会)養成講座委員会 委員長
1990(平成2)年日本獣医畜産大学(現:日本獣医生命科学大学)獣医学科卒。
卒業後、動物病院勤務、米国留学.行動クリニック開業を経て、2007年に大学へ。2022年より現職。
主な著書に
「愛犬の気持ちがもっとわかる!イヌの心理学」西東社(2013),
共著、監修として
「犬と猫の問題行動の予防と対応」緑書房 (2019)、
監訳として
「ザ・カルチャークラッシュ」ジーン・ドナルドソン著 レッドハート(2004)、「テリー先生の犬のしつけ方教室」テリー・ライアン著 日本動物病院協会(2004)、「犬と人の絆:なぜ私たちは惹かれあうのか」アレキサンドラ・ホロウィッツ著 緑書房(2021)など
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11月21日(金)10:00~10:50
温故知新 ドッグトレーニングのこれまでとこれから
ドッグトレーニングの歴史は軍用犬や貴族の猟犬トレーニングから始まり、家庭犬のトレーニングも最初はこれらから派生している。その後、パックリーダー論(オオカミから学べ)の隆盛、ほめるしつけ(ポジティブトレーニング)の台頭が起こった。さらにほめるしつけからの揺り戻し、パックリーダー論の否定、犬の社会認知的能力の研究などにより家庭犬のトレーニングも変化している。日本と欧米におけるドッグトレーニングの歴史を振り返り、これからのトレーニング、欧米の追随ではなく我が国に合ったトレーニング(家庭犬のしつけ)とは何かを考察する。 |
石綿 美香

株式会社ALETTA 代表
CPBC (Certified Parrot Behavior Consultant), IAABC(International Association of Animal Behavior Consultants)
CPDT-KA, CCPDT(Certification Council of Professional Dog Trainers)
Fear Free Certified Animal Trainer
上智大学外国語学部英語学科卒
英国の金融専門出版社勤務
在英中、一緒に暮らし始めた犬との生活をきっかけに動物の行動や心理に興味を持つ
1998年 在英中 Animal Care CollegeでCanine Psychology, Dog Training Class Instruction学ぶ
2003年 帰国後、犬の行動に関するトレーニング、コンサルティング、セミナー CPDT取得
2010年 コンパニオンバードのためのトレーニングに関わる、全国各地で鳥のトレーニングクラス、セミナー、コンサルティング
2011年 Living & Learning with Animals for Animal Professionals コース修了
2016年 ALETTA設立 TSUBASAバードライフアドバイザー2級 行動部門 講師
2019年 爬虫類のための行動とトレーニングセミナー開始
2021年 TCA東京ECO動物海洋専門学校 アニマルトレーニングクラス 講師
2023年 Change Makers Medal of Honor受賞
2023年 Fear Free Veterinary Certification program – Avian修了
2024年 米国・国際行動分析学会(ABAI)で「爬虫類のためのコンストラクショナルアプロ-チ」発表
監修:
「インコのための最高のお世話」「インコ芸&おしゃべりレッスンBook」 「インコにモテモテ」 「大きなインコとオウム飼いになる」等
訳 書:
「カーミングシグナル Turid Rugaas」、「犬にTタッチ Debby Potts」、「テリーライアンのパピーブック Terry Ryan」 |
11月22日(土)10:00~11:50、13:00~14:50
大切にしたい「やりとり」
強化システムでコミュニケーション力アップ
強化システムってなにか堅苦しい表現に聞こえるかもしれません。
実はこれは「いつ、どこで、どんな風に強化を得られるか」を動物に明確に伝えるためのものなんです。
シンプルなことですが、実際にはこれが伝わっていないためにトレーニングがうまくいかなかったり、生活で困った行動が増えてしまったりします。
Behavior Explorer(Jesús Rozales-RuizとMary Hunter)で学び始めて3年。目からウロコの画期的なコミュニケーション方法だと感じています。
私自身が経験したように、これまで動物との日々の関わりやトレーニングで「なんとなく出来ていた」「なんとなくうまくいかない」「飼い主さんへの伝え方が難しい」など、曖昧だった部分がスッキリ明確になると思います。
今回は、強化システムとそのベースとなっている相互作用行動連鎖(Interconnected Behavior Chain)について、ビフォー/アフターがわかりやすい事例などをご紹介しながらお伝えします。
この連鎖を人間同士で学べる卓上ゲームPORTLについてもお話する予定です。 |