Ken Ramirez (ケン・ラミレズ)
ケンは、Karen Pryor Clicker Training(カレン・プライヤー・クリッカー・トレーニング)の上級副社長および主席トレーニング役員であり、同団体におけるトレーニング教育プログラムの構想、開発、実施を統括している。
前職は、シカゴのシェッド水族館で、アニマル・ケアと動物のトレーニングの上級副社長。アニマル・ケアと動物の健康プログラム、スタッフのトレーニングと開発、および32,000頭を超える動物の公開プレゼンテーション用プログラムの開発と監督を務めた。ケンはシェッド水族館に25年超勤務し、現在もコンサルタントとして業務を提供している。
ケンは40年以上に及ぶアニマル・ケアとトレーニングのベテランで、生物学者でもあり、また、動物行動専門家として、世界中の多数の動物の施設や団体に対して、トレーニング・プロジェクトの監督やコンサルテーションを提供している。ケンのトレーニングのキャリアは視覚障害者のための盲導犬育成から始まり、キャリアを通してペットのトレーニングとは近しい関係を保っている。ケンがホストしたTV番組「Talk to the Animals」は2シーズンの成功を収め、ペットのトレーニングを、動物園等の施設での重要なトレーニングおよびアニマル・ケアと比べて説明した。近年では、複数の捜索救助犬団体、サービスドッグのグループ、爆弾や薬物探知犬との連携業務を行った。
ケンは、海洋動物トレーナー協会(IMATA)の前会長でもあり、同団体を含む複数のプロフェッショナル団体で活動を行っている。また、ウェスタン・イリノイ大学の大学院で20年間、動物トレーニングのコースを教え、また、多数の科学出版物および文献の著者である。著書は、「ANIMAL TRAINING:Successful Animal Management through Positive Reinforcement」が1999年に出版され、最新は2020年出版「The Eye of the Trainer:Animal Training, Transformation, and Trust」。 |
①11月26日(金)②11月27日(土)各日 10:00~11:50
「問題解決に向けて」
Problem Solving①、②
ケンはコンサルタントとして、トレーニング上の課題解決の依頼を頻繁に受けます。問題を起こしている動物園の動物から、扱いが困難な作業犬、そしてもっと一般的なペットが抱える課題まで、幅広い依頼に応えます。そのとき、すべてのケースにおいて、ケンは問題解決のためのフローチャートもしくはマトリックスを用います。これらは、彼とクライアントを効果的な解決へと導くシステムです。成功のためのこのプロセスを、ケンはセミナー参加者のみなさんにお教えします。
As a consultant, Ken is frequently called upon to resolve training challenges. These have ranged from problematic zoo animals to difficult working dogs to the more common pet challenges. In every case, he utilizes a problem-solving flow chart or matrix; it is a system that guides him and his clients to an effective solution. He will share that successful process with participants.
③11月28日(日)10:00~11:50
「複数の動物とのトレーニング」
Working with More than One Animal
私たちは、多くの場合、動物と1対1でトレーニングを行いますが、では、同時に複数の動物とトレーニングや作業を行うときはどのようにすればよいのでしょうか。この講義では、動物がグループでいることが日常的である、動物園等の動物施設でケンが得た技術と知識を皆さんにお伝えします。あらゆる種類の動物とのトレーニングに当てはまるように説明します。この講義の中でケンが焦点を当てるいくつかの重要なコンセプトは:ステーショニング、公正さ(フェアネス)、クリッカーの使用、新しい動物を引き合わせる(新しい子犬、里親として引き取る犬、犬に猫を引き合わせる、もしくはその他の種類の動物でも)です。
Often, we teach training by focusing on working one-on-one. But how do we train and work with multiple animals at the same time? In this Session Ken will share techniques and knowledge he gained from working in the zoological community, where working with groups of animals was the daily norm. He will translate that knowledge to working with animals of any type. Some of the key concepts that Ken will focus on include stationing, fairness, clicker use, and new animal introductions (a new puppy, shelter dog, a cat to a dog, or any species of animal). |
志田 有美佳(シダ ユミカ)
都岡動物病院(ツオカドウブツビョウイン)副院長
夫と共に一般診療を通じて予防医療と治療後のケアに重点を置いて診療。
病氣・ケガ・問題行動は、生活習慣とつきあい方で予防できるとして、さらに治療後のケアについても再発防止に重点をおき飼い主への説明と診療にあたる。
近年は、ドッグトレーナーによるしつけ方教室・相談会を定期開催し、場合により治療後飼い主の自宅ケアの仕方の指導にもあたってもらっている。
2016年日本臨床獣医学フォーラム(JBVP)年次大会にて「治療における体重調整の効果について」ポスターセッション参加 |
2020年11月26日(金)13:00~14:50
「感覚障害から引き起こされる犬の行動」~常同障害へのアプローチ
一般的に心の病気・ストレスが原因の一つと言われる常同障害。中でも特に尾追い・足先を舐める行動は、ひどい場合、尾や指先をかじり切ったりしてしまいます。
心の病気・ストレスと片付けるのではなくこれらの行動の元々の原因が感覚異常にあるというアプローチから紐解きます。
症状が進行してひどくなる前にドッグトレーナーさんや飼い主さんでも出来る症状の見方・改善方法・予防についてもお話しいたします。 |
藤田りか子(フジタリカコ)
ブログサイト「犬曰く」運営者&ドッグライター
スウェーデン、ヴェルムランド県にて、カーリーコーテッド・レトリーバーのラッコ、ラブラドール・レトリーバーのアシカ&ミミチャンと暮らす。
ノーズワークとガンドッグスポーツのコンペティター。趣味はドッグトレーニング。
オレゴン州立大学を経てスウェーデン農業科学大学の野生動物管理学卒業。生物学修士(M.sc)。
ドッグライター歴23年。「WAN」「愛犬の友」など多くの犬雑誌で記事を執筆。
主な著書:「最新世界の犬種大図鑑(誠文堂新光社)」「Retrievers and all about them(ネクストパブリッシング)」など。 |
11月27日(土)15:00~16:30
「どうして学習理論だけじゃ犬と仲良くなれないの?」
犬と人とのハーモニックな関係性というのは、お座りと伏せ、を教えれば「完成」というわけではありません。
では他に何かするべきことがあるのでしょうか。
関係性の構築というのは、特に初心者の飼い主さんには一番わかりにくい部分かもしれません。とても感覚的でアブストラクト(抽象的)だからです。
トレーナーさんですら、それについてどのように説明したらいいか、きっと迷ったことがあるのではないでしょうか?
講演者の経験から動画紹介、さらに学術的なエビデンスとして最新犬学研究からのいくつかの興味深い結果を紹介します。 |
尾形聡子(オガタサトコ)
ドッグライター
東京の下町にてスパニッシュ・ウォーター・ドッグのはなと暮らす。慶応義塾大学法学部卒業後、7年の映画会社勤務を経て、東京大学大学院農学生命科学研究科に入学。応用動物科学専攻・細胞生化学研究室にて修士課程修了(M.sc)。
著書の「よくわかる犬の遺伝学」をはじめ、雑誌やWebなどに記事を執筆し、現在は犬ブログサイト「犬曰く」を運営。難しいと思われがちな犬のサイエンスをわかりやすい言葉で伝え続けている。
「犬曰く」https://inuiwaku.net/ |
11月26日(金)15:00~16:30
「攻撃性をつくりだすもの〜遺伝子、環境、エピジェネティクス」
犬の性格はどのようにしてつくられているのでしょう?
そこには犬によってそれぞれ異なるDNA情報、生育環境や日常生活、さらには遺伝と環境をつなぐエピジェネティクスという生命現象が複雑に関わっています。
この3本柱のどれもが性格形成に影響し、その結果として性格を反映する行動の差としてあらわれてきます。そのような行動の中には人と犬が共生するにあたり好ましいものもあれば、好ましくないものもあります。好ましくないものは問題行動として認識され、中でも世界的に問題視されているのが攻撃行動です。
今回は主に「生まれ」の部分である遺伝情報、「生まれと育ち」をつなぐエピジェネティクスを中心に、最新の学術研究を紹介しながら性格形成についてお話したいと思います。 |
北條美紀(ほうじょうみき)
臨床心理士・公認心理師。北條みき心理相談室運営。
個人カウンセリングを中心に、カップル、家族なども対象にしている。
十数万時間のカウンセリングを重ねた今でも、人の心についての興味は尽きず、そんな興味をもとに日々カウンセリングに臨んでいる。
現在、ウェブサイト『犬曰く』にて、飼い主心理に関する記事を担当。
犬と人との関係を考えるためには、犬にかかわる人間の心理学的理解がその一助になるのでなはいかと鋭意思案中。
飼い主心理の視点からのケースカンファレンスなども実施している。 |
2020年11月27日(土)13:00~13:50
「問題」は犬と人との関係の中に ~感情は感染する
・犬の行動は感情によって引き起こされる
・感情は関係の中で感染し循環する
・問題行動の裏には扁桃体 ~恐怖と怒りは表裏一体fight or flightそしてfreeze
・人の感情は思考によって引き起こされる ~ABCモデル
・目指すは犬と人との持続的幸福flourishing
2020年11月27日(土)14:00~14:50
犬を幸せにする「人の」ストレス耐性 ~人にも使ってる?学習理論
・低下し続ける「人の」ストレス耐性
・犬の感情を作り出すのは人? ~投影という心の働き
・犬にも人にも「主体性」を ~持続的幸福のために
・反応すること、これぞ学習理論! ~実践タイム!
私たちが目指しているのは「犬が幸せに暮らすこと」。なぜ、それが目標になるかと言えば、「犬が幸せに暮らすこと」が私たちの幸せになるから。だから、症状の軽減や問題行動の消失がゴールではありません。このカンファレンスでは、その先にある犬と人との持続的幸福のイメージを共有したいと思います。前半では、問題とされるものは、犬の中ではなく、犬と人との関係の中に潜んでいる可能性を考えます。それを踏まえ、後半では、持続的幸福のために私たちに必要な視点や態度を具体的に試行錯誤してみましょう。
頭も心もフリーにして、大いに楽しんでください! |
金巻 とも子(カネマキ トモコ)
家庭動物住環境研究家、一級建築士、博士(工学)
一級建築士事務所 かねまき・こくぼ空間工房 主宰
工学院大学建築学部建築学科 非常勤講師
住宅・店舗の設計業務の他、家庭動物との暮らしをテーマに住環境コーディネーターとして活動し、建築の学術研究と住生活関連の商品開発に携わる。行政や獣医師会等に協力し、適正飼養に向けた環境整備の推進に取り組んでいる。
「ペット共棲住空間用の建材に関する研究と技術開発」でH25年度日本建築仕上学会学会賞(技術賞)受賞。大学での学生指導と、住まいの専門家向けに「犬との住まいスペシャリスト」講座の講師を務めるなど、後進の育成にも努めている。
著書に『犬・猫の気持ちで住まいの工夫』(彰国社)、『ねこと暮らす家づくり』(ワニブックス)、など。
|
11月28日(日)13:00~14:50
犬との暮らしを家庭動物共棲住環境システムで考える
-犬の行動に影響を及ぼす住環境の構造的課題-
室内飼育が一般化し、犬との暮らしに向けた様々な住提案がなされていますが、いまだ多くの家庭で、室内の汚損や騒音、またハウスダストアレルギーなどの室内飼育が起因した健康影響を抱えている状況も続いています。
そこで、住まい手(ヒトと犬)の「住行動(行い)」と、住の整備という「もの」の相互関係に着目し、空気質や音といった環境の整備により、ヒトと犬との住環境の課題に対応する「家庭動物共棲住環境システム」の提案をご紹介します。快適な住環境で住み手の健康面を支えることが、住まい手の学びの効率も高めるため、室内の課題改善と質的向上に繋がるという提案です。
室内飼育に影響する日本の住文化と、家庭内の課題が近隣に影響をおよぼしやすい「集合住宅」での住環境課題を取り上げ、改善に向けたポイントを確認します。 |
有動 敦胡(ウドウ アツコ)
Dog Nook Training & Behavior、カレンプライヤーアカデミー認定トレーニングパートナー(KPA-CTP)、NACSW認定K9ノーズワーク準インストラクター(ANWI)、一般社団法人the VOICE(ぼいす)代表理事、東京都動物愛護推進員
Dog Nook Training & Behaviorを所有し、出張トレーニング、クリッカートレーニングおよびノーズワークのグループクラスの運営と教授、問題行動の行動コンサルテーション、トレーニングプランのワークショップ講師など、飼い主さまを含むプロフェッショナルなケアギバーへのサポートを行う。
ぼいすのボランティアワークとして、ポジティブな手法を用いる行動のプロフェッショナルを海外より招聘、セミナーを開催している。また、年4回どうぶつに関する勉強会を開催、講師をつとめる(現在はオンライン開催)。
保護活動は1990年後半に預かりボランティアとしてスタート。保護犬など背景のわからない犬たちのコンサルテーション及びトレーニングのスペシャリスト。
|
11月28日(日)15:00~16:50
「ボディランゲージへの理解がトレーニングをより深遠なものへとトランスフォームする」
トレーニングは、犬がリラックスしていてかつこちらに意識を向けているとき、よりスムーズに、そして意欲的に進めることができます。私たちトレーナーは初めての犬に会う機会も多く、特にセンシティブな個体と接するときに、その個体が反応してしまう刺激をトレーナーがくわえてしまうことはマイナス要素しかありません。トレーニングを大きく後退させることにもつながります。
この講義では、昨年10月にイラストレーターのリリ・チンさんが上梓された書籍『Doggie Language』を参考に、代表的なボディランゲージを紹介しながら話をしていきます。
ボディランゲージは、犬から脈略なく出てくるサイン/シグナルではありません。きっかけがあり、その状況や環境を変えるための行動として選択され、そして行動したあとに行動に相応しい結果が伴います。ボディランゲージをきちんと観察できる能力だけでなく、目の前で起きている“行動の機能”をきちんと見られる能力。そして、適切な反応(行動)、つまりボディランゲージが生起するように環境を整え、犬の行動に応じて変更できる能力。これらが“ボディランゲージへの理解”であり、この理解が深まるほどにトレーニングという機会がより深いものへと変化していくのだろうと考えます。 |