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JAPDTメールマガジン 2015年 Vol.5
【病気の早期発見に役立つトレーニング】 (2015年6月配信)
今日は、ちょっと嬉しいエピソードがありましたので紹介させていただきます。
先日6才7カ月になるTプードルレッドの飼い主様より突然お電話をいただきました。
「いま、手術をしているところなのです」という言葉からはじまり、
「どうしたの?」と久しぶりのビックリと事の重大さに大変驚き、しどろもどろでした。
聞けば、浸潤性の癌が見つかり、筋組織まで削る大手術なのだそうだ
Tプードルのレッドの飼い主様で僕が覚えている犬(こ)は少ないのですが、
その飼い主様は牡・牝の2頭で飼われていて、どちらも教室に来ていただいていたこと、
3年ほど前に「その犬(こ)から子供を産ませたい」と相談を受けたこと。
自家繁殖はもともと反対派の僕ですから、デメリットを昏々と説明させていただいたこと。
それでも繁殖に踏み切り、生まれた3兄妹のうち、一頭は残し、娘さんのお友達の家庭に
「僕の主催するしつけ教室」に参加する事を条件に貰われていき、皆教室に参加していただいたこと。
案の定、母となった犬(こ)は、人にも他犬にもとっても友好的だったのだが、出産を機に子を守る責任感の強さから、
近寄る犬に攻撃的になってしまい、その修正のトレーニングを行ったことがあり、
とても印象的な飼い主様なのでした。
その犬(こ)は、木曜日の日にシャンプーをし、全身くまなくチェックをしたのですが、全く問題がありませんでした。
たまたま日曜日に、最近勉強を始めたTタッチの練習のために身体を触っていたときに、
肋骨付近に湿疹のでき始めかな?と感じる程度のふくらみを感じたそうです。
念のため月曜日に動物病院に行き、念のため組織検査のためにサンプルを採ってもらったそうです。
そして水曜日、心なしかそのできものが大きくなったかな?と気にしていたところ、
獣医さんから連絡があり緊急手術になった・・・という経緯です。
発見してたった3日で手術なのに、こんなに大手術になったという複雑な想いのなかで、
(この種の癌は、足先だったら断脚するほどのものらしいです)
たかが『しつけ教室の先生』の僕に連絡をいただけたことが嬉しかった。
そしてその時に「レッスンの中で、身体全体を預けるスキンシップをたくさん行っていたことが
早期発見につながった」と感謝されたこと「世の中に、ブラッシング嫌い、肢先を触られるのが嫌い、
怒る…という犬が多くいるが、スキンシップの大切さを広めていってあげてください」という
お言葉をいただけて、嬉しく、また この仕事を続けていて良かったと思えた瞬間があったのです。
メルマガを読まれている皆様からも、触られることを受け容れる練習の大切さを是非、拡めていって頂けたらと願います。
JAPDT理事 鳴海 治
JAPDTメールマガジン 2015年 Vol.4
【犬を飼うということは】 (2015年5月配信)
2014年の全国での犬の飼養頭数は約10,346千頭と推計されています。
2010年以降、多少減少傾向にはあるようです。
飼養頭数は減少にあるものの、多頭飼いが増加しているとも言われています。
現在では15歳未満の子供の数よりも犬猫を含めたペットの飼養数のほうが多くなっています。
飼い主さんの割合としてもお子さんが独り立ちし、子育ての無くなった世代のご夫婦も増えていますね。
さて、ここで人が犬を飼う理由を考えて見ましょう。
ペットフード工業会の調査によるとトップ3は以下になります。
1、生活に癒し、安らぎがほしい
2、以前の犬が亡くなった
3、家族、夫婦のコミュニケーションに役立つ
これは一般の飼い主さんの場合ですね。
トレーナーの場合、ここにもう一つ、はっきりとした理由が入ってきます。
勉強のためというのがもっとも重要な理由となりますね。
私も今は2頭のビーグルの飼い主です。彼らには毎日いろいろなことを教えてもらっています。
今まで居てくれたビーグルたちにもたくさんのことを教えてもらいました。
トレーナーにしてくれたのは彼らが居てくれたからです。
前段であげている飼う理由は飼い主さんの理想でもあります。
犬を飼うことで、生活が豊かになればいい、前の犬はなにもしなくても良い子だったから今度の犬もそうだろう、
犬を介して会話や行動が増えて、家族として楽しい生活がおくりたい
・・・
この理想がうまくいく場合もあります。うまくいけば、飼い主さんも犬も快適な生活を得ることができますが、
飼い主さんの理想の基準に外れてしまった場合、飼い主さんはストレスを感じ、
犬のせいにすることが多くあるのではないでしょうか。
犬は生き物です。生き物である以上、少なからず、個体差があります。
まして、犬は社会性のある高等動物であり、人が手を入れて作られてきた動物です。
犬種ということもありますが、個性、感情を持っています。
同じ犬種であれ、同じ個体はなく、兄弟であっても個性があります。
犬を飼うということは、理由はどうあれ、その犬の個性を知り、個性を受け入れ、
共生をしていくということなのではないでしょうか。
JAPDT事業企画委員 水野和子
JAPDTメールマガジン 2015年 Vol.3
【 ドッグトレーナーの役割とその責務 】 (2015年4月配信)
日本ではペットブームが到来し、多くの飼い主が純血種を「家族の一員」として、
それまで以上にお金をかけ大切に飼育するようになりました。
しかし、犬の飼育目的と環境が急激に変化した日本では、具体的な飼育方法や関わり方が
広く一般に普及しておらず、「犬の問題行動」、「飼い主のモラルの低下」、「不適切な飼育・放棄」
などといった様々な問題が解決されることなく、その現状が今でも続いています。
このような現状を解決し、人と犬が共に幸せに暮らせる社会を構築していくためには、
犬に関する「正しい知識」、「適切な飼育・管理方法」、「犬のしつけ方」などの情報を広く社会に普及させ、
飼い主一人一人が「犬の特性に配慮をした適切な関わり方」や、「社会に受け入れてもらえる犬の教育」を実践できるように、
飼い主教育の場を増やしていく重要があります。
そして、この情報発信と飼い主教育を行う専門家こそがドッグトレーナーであり、
今の日本の犬文化を改革するためにその存在は必要不可欠なのです。
日本人と犬の歴史は、犬の能力を使役として利用せず、一定の距離を保ちながら共存してきたため、
犬の特性について理解を深める機会があまり多くはありませんでした。
そのため、多くの飼い主が専門家のサポートなしで多種多様な犬種の特性を理解し、
適したしつけを実践することは不可能に近いのではないでしょうか。
飼い主と犬とのサポートができる専門家は、しつけ方や犬の特性を熟知しているドッグトレーナーしかおらず、
人と犬のより良い共生を目指すためにその役割は非常に大きいはずです。
そのため、ドッグトレーナーは犬の特性を伝えることで、擬人化した関わり方ではなく
犬という生き物との向き合い方やしつけ方を飼い主に指導し、多くの技術や経験を得ること以上に、
科学的な情報や最新の知識を得る努力をし、犬に関する知見を広げることも重要となります。
また、ドッグトレーナーの仕事の多くは、飼い主と犬との間で生じる問題を解決することですが、
ドッグトレーナーは犬という動物の素晴らしさやその能力の高さ、人に与える恩恵などについて広く一般に認知してもらい、
社会の受け入れを広げるための働きかけをしなければならないと思います。
家庭犬は、飼い主のみならず社会とのつながりも持つため、モラルの低下によって社会の受け入れが狭まることで、
飼い主が問題として感じなくても犬との共生社会は実現できません。
欧米諸国のように犬が家族の一員となるためには、日本においても社会に受け入れられる犬と飼い主を増やすことが急務であり、
それはドッグトレーナーの使命であるとおもいます。
インドの非暴力運動の指導者として有名なマハトマ・ガンジーは
“The greatness of a nation and its moral progress can be judged by the way its animals are treated.”
(国の偉大さ、道徳的発展は、その国における動物の扱い方で判る。)という言葉を残しています。
日本は、高度経済成長によって物質的な豊かさを得た一方で、心の豊かさや道徳心などを失ってきました。
いじめや自殺などの社会問題の解決法として学校での道徳教育などが見直されていますが、
ドッグトレーナーがその責務を果たすことで、人と犬が互いに幸せに暮らせる共存社会が確立し、
わが国の道徳的発展に貢献できるかもしれません。
JAPDT事業企画委員 鹿野正顕
JAPDTメールマガジン 2015年 Vol.2
【 犬の社会化とは 】 (2015年3月配信)
今回は岡本が記事を担当いたします。
拙い文章で読みにくいと思いますが、一読いただけたら幸いです。
今回は「犬の社会化」について改めて考えてみたいと思います。
私も日頃から現場にて、飼い主の方に犬の社会化とは・・・と説明することが多々あります。
様々なメディアでも、犬の社会化に関して取り上げられていますが、犬の社会化の定義とは何か?と
考えた時に一文で表現することが難しいことであるといつも感じています。
私が持っている「犬の社会化」のイメージとしては、人の社会の中で、過剰に興奮したり怖がったりせず、
普通に生活できること と考えているのですが、自分でも曖昧な表現だなと思っています。
「犬の社会化」とはどういうことなのでしょうか。
人の世界での社会化を調べてみました。
社会学における社会化とは「個人がその所属する社会や集団のメンバーになっていく過程」と定義され、
新しいメンバーが社会・集団において制度化されている知識、技能、行動様式、価値などを習得しながら、
それらに適応することをいう。とされています。
犬に置き換えてみると、「人の社会や集団のメンバーになっていく過程」、
犬が人社会・集団において知識、技能、行動様式、価値などを習得しながら、それらに適応すること。
つまりは、犬が自分で人の社会を理解し、適応することは困難で、
また、犬は犬という動物としてその道理に従い生きていきます。
人の価値観、ルールは場合によっては反発する対象になってしまうこともあるでしょう。
人⇔犬 お互いが折り合えるものとはどのようなものなのでしょうか。
そこで、私個人が考える、犬が人社会へ適応するために必要だと思う要素を挙げてみました。
1.人の生活空間の中で遭遇する色々なものへ慣れる
犬にとって人社会の刺激は新規に経験することが殆どです。
人、物、場所、状況、様々な刺激に対して自分にとって害が無いことを経験する必要があります。
2.人とのコミュニケーションを学び、人と生活するうえでのルールを学ぶ
15,000年の間、生活を共にして生きている動物とはいえ、人間の生活様式もその時代で様々に変化しています。
現在の人社会、しいていえば日本での生活様式を学ぶ必要があります。
3.犬らしく生きる
この要素は、人間側が配慮すべきもので、犬にとっての利益を考えなくてはいけないと思います。
つまりは、人と犬が幸せに暮らすためには人側の介入が必須であり、飼い主がどれだけ社会化の機会を与え、
犬に楽しみを提供できるかによることだと思います。
ただ単に、スワレ・フセなどをトレーニングすれば社会化が出来るわけではありません。
時には、トレーニング手法にばかり偏りがちになってしまう場面もあると思いますが、
「動物としての犬」を深く理解し、トレーニングを通して、人との生活へどのように応用すれば
「しつけ」 となるのか考えることが社会化だと思っています。
ただ、具体的な社会化の項目とはどのようなものかとなると、
子犬時期・成犬時期など行動発達ステージで対応は変わってきますし、
ここで述べていると取り留めもなくなるので止めておきますが、
人の価値観や生活環境・文化の違いなども考慮しなければいけないことがあると思います。
ペットドッグトレーナーとして人と犬の共生を考える時に、どのようなイメージを持って社会化をするのか、
そのイメージを具現化するためにはどのような手法を用いるのかなど、ペットドッグトレーナー同士、
さらには動物業界全体でのイメージの統一と情報の共有化が必要であると深く感じます。
最後に、私は、犬が人と生活するうえでトレーニングは必須である動物だと考えています。
「犬が人と共生するうえで必要な行動様式を学習し人社会へ適応する」ためには、
犬に対して我慢を強いる場面は多々あると思いますが、犬らしく生きていけるように楽しみを提供することを
いつも頭の中におきつつ、人と犬の理想的な共生とはどのようなことなのか考えていきたいと思っています。
犬に楽しみを提供することによって得られる人側の利益は皆様ご存知だと思います。
日本における犬文化がさらに素晴らしいものへと発展させるためにご協力いただけたら幸いです。
JAPDTメールマガジン 2015年 Vol.1
【 犬と電車に乗ってみました 】 (2015年2月配信)
今回のメルマガから、JAPDT事業企画委員会メンバーが交替で記事を書かせていただくことになりました。
よろしくお願いいたします。では、真壁の記事からお付き合いください。
昨年11月、ある競技会に出場するために黒ラブミックスのラーラを連れてドイツに行ってきました。
ラーラは、当時2歳3か月のメスで体重は17kgでした。
もちろん、その競技会に出場することが第一の目的でしたが、
せっかくドイツに行くのですから、日本でできないことをやって来ようとも思っていました。
その中でも、「これは絶対にやりたい!」という事が「犬と電車に乗ること」でした。
中型犬や大型犬を日本で電車に乗せることは難しいので、犬OKのドイツで、キャリーバッグに入れずに犬を電車に乗せる。
是非、これをやってみたかったのです。
ドイツでは、電車のキップ自動販売機の中に犬用のキップもあり、自分のキップを買った後に、
犬用のキップを買って改札を通れば、特に止められることもなく、普通に電車に乗ることが出来ました。
席が空いていない時は、扉近くで邪魔にならないようにお座りをさせました。
席が空いた時は、扉近くにいた方が迷惑になりそうなので席に座りラーラには足元でお座りをさせて、
通路をふさがないようにしました。
ラーラはしっぽが長いので、踏まれないようにラーラの身体にしっぽを寄せて足で押さながら乗ることになり、
犬をそのまま電車に乗せるのも結構、気を使って大変・・・ということも分かり、良い経験になりました。
ドイツの人たちは、犬が乗ってきても別に何の反応もなく普通にしてくれましたので、犬達も興奮することなく、
初めてとは思えないぐらい落ち着いて乗っていました。
他にも、ケーブルカーやスロープ型のエスカレーター、空港のモノレールにも乗りました。
日本でも、電車に犬も乗れるようになれれば良いのに・・・という声はありますし、
実際に問題なく乗れる犬もたくさんいるのだろうと思います。
電車に乗せることが最終的な目標ではなく、電車に乗る事は、
あくまでも日常の出来事の一つであって、人々が日常的に行うこと。
つまり、「日常生活に同伴できる犬に育てること」が家庭犬に必要な事なのだろうと感じました。
それは、犬だけの問題ではなく、社会の環境も整えるということも含め、
一緒に変えていくことで実現していくのだと思います。
そのために私たちペットドッグトレーナーは、何をしたら良いのでしょうか。