第13回カンファレンス
講師紹介・講演概要 、順次更新していきます。
プログラムはコチラです。
講師紹介 |
講演概要 |
Jennifer Messer (ジェニファー メッセ)
ジェニファー・メッセ博士は、1993年にマックジル大学で心理学の学士号を優等学位で取得し、2001年にオンタリオ獣医大学を獣医師として卒業した。子犬の訓練と行動に関するトピックについて執筆・講演している。
彼女のカリキュラム・マニュアル 「キンダーパピー・コース(Kinderpuppy Course)」と「パプ・エッセンシャルズ(Pup-Essentials)」は世界中のドッグ・トレーナーによって使用されている。ジェニファーは仲裁に強い関心を持ち、最近、カールトン大学の紛争解決プログラムで大学院卒業証書を取得した:犬の所有者がお互いにけんか腰になったとき、彼女の手法が重宝する!
カナダ・オンタリオ州のオタワ市避妊・去勢クリニック(the City of Ottawa Spay/Neuter Clinic )所長。 |
パプ・エッセンシャルズ
(Pup-Essentials )
(金曜日:15:00~16:50)
90分のパピー・クラス。1つのセッションで、重要な子犬のトレーニングのトピックをすべて網羅する。全コースを受講せずに、パピー・クラスを受けてみたいというオーナーのための素晴らしい入門コース。獣医科クリニックでパピー・クラスを宣伝する方法として利用することもできる。
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子犬の行動評価パート1、パート2
(Puppy Behaviour Assessments Part1、Puppy Behaviour Assessments Part2)
(土曜日: 10:00~11:50、 13:00~14:50)
子犬の行動を評価すべき多くの理由がある。評価を役立つものにするためには、標準化されたアプローチが重要である。私たちが探しているものは何か、結果をどのように解釈するのかを知っている必要がある。
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パピー・クラスの楽しみと安全
(Fun & Safety in Puppy Classes)
(日曜日:10:00~11:50)
パピー・クラスには特別な安全上の注意がいくつかある。交流は楽しいものだが、それは安全な環境の下で行われる場合に限られる。子犬は清潔で安全な環境に置かれなければならず、インストラクターは、受け入れ可能な子犬の月齢、必要なワクチン、また、医学的な問題を抱える子犬の参加の可否を知っている必要がある。このセッションでは、基本的なクラスの安全性とパピー・クラスを実行するための医学的配慮および確実に楽しいクラスを計画する方法について説明する。
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藤井仁美 (ふじい ひとみ)
代官山動物病院/自由が丘動物医療センター
獣医師・獣医行動診療科認定医・ペット行動カウンセラー1990年 東京農工大学農学部獣医学科を卒業後、都内の動物病院に勤務。
1995年 シンガポールへ渡航。マウント・プレザント動物病院に勤務。
1998年 渡英。ロンドンのメディベット動物病院に勤務。後に同病院の獣医行動アドバイザーとなり、しつけ相談・子犬クラス・ペットのストレス対策のアドバイスなどを行う。また、ロンドン市内のドッグスクールで、犬のしつけインストラクターとして勤務。
2009年 サザンプトン大学院心理学部動物行動学科伴侶動物行動カウンセリング専攻卒業。卒後ディプロマ(専門医資格)を取得。
2013年 獣医行動診療科認定医の資格を取得 |
問題行動とは何か?
〜その成り立ちやアプローチの原理を考える~
犬の「問題行動」とはど「人間が問題と感じる行動」と定義されている。この問題行動による犬の安楽死の実態が米国で明らかになった1970年代後半から、欧米が先駆けとなり、現在は日本においても、「動物行動学」や「アニマルウェルフェア」などの学問をもとにした「臨床行動学」が獣医界に導入され、獣医学教育のプログラムのひとつとなり、動物病院・行政・動物福祉施設などにおける問題行動への予防・早期介入・治療(行動診療)などが急速に推進されるようになった。
しかし、それよりはるか前から犬のトレーニングは行われており、トレーニングをつうじて犬の「問題行動」を変容させるといった試みが様々な理論や方法に基づいて実施されてきたという歴史がある。
本講演ではこのような歴史を踏まえつつ、犬の「問題行動」の成り立ちとそれに対するアプローチの原理について、獣医臨床行動学の見地から最新の情報や具体例もまじえて解説する。 |
田中利幸 (たなか としゆき)
20歳の頃、弟が拾ってきた犬に咬まれないためにしつけ教室に通うが体罰式の訓練に疑問を感じ、生活を共にするための共育(教育法)やしつけ法などを学ぶためにイギリスへ。グエン・ベイリー女史にコンタクトを取り、指導を受ける。動物行動学博士であり獣医師のピーターネビル博士を師事。帰国後TANAKAファミリードッグスクール(飼い主さんと通学型)を開校。2012年よりドッグ&オーナーズスクールONELifeのトレーナー、カウンセラーとして、獣医師と連携した問題行動改善に取り組み、年間のべ約3000組の飼い主指導にあたっている。一般社団法人国際家庭犬トレーニング協会認定家庭犬トレーナースーパーバイザー資格、英国式ドッグ行動カウンセラー |
獣医師とトレーナーの連携
~実際の現場実例と必要性~
家庭で人と犬が共に生きる・・そうしたスタイルが当たり前になってきている反面、人間と共に生きるために必要な育みの普及がまだ追い付いていない状況です。現場では犬が問題の行動をとっているのか?飼い主さんが問題の行動をとっているのか?いう評価が重要ではなく、互いに疲弊してしまい適応できなくなっているケースが増えてきています。そうした中で病気が原因で問題行動を起こしているケースなどもあり、またストレスによる犬が適応するにあたって色々と負担が大きすぎる状況の場合は、行動診療医の診察、診断のもと、薬物療法のサポートが必要なケースが多くなってきています。飼い主さんのサポートと犬のサポートを両面からサポートしていく上で獣医師とトレーナーの連携が重要になってきています。実際にどのように連携して行っているか?実例紹介や必要性について家庭犬問題解決専門の飼い主トレーナーがお伝えしたいと思っています。 |
山下國廣 (やました くにひろ)
日本獣医畜産大学(現日本生命科学大学)卒。獣医師。犬の問題行動治療やしつけ・トレーニング指導を行う「軽井沢ドッグビヘイビア」主宰。
幼少時より一貫して日本犬と暮らす。
一時期大流行した支配-従属理論(犬と飼い主の関係を順位付けでとらえる俗説)に当初より強い疑問を持ち,行動分析学の文献を独習しつつ「自分が犬の立場なら」という素朴な発想でしつけ・訓練に取り組む。
長年勤務獣医師として家畜臨床にたずさわる傍ら,ボランティアで飼い主の相談に応えて来たが,2005年にしつけ指導・行動治療専門獣医師として開業。不適切なトレーニングで性格を荒らされてしまった日本犬の相談が多い。
相棒の甲斐犬すぐり(1996.07.02~2012.02.28)を日本犬初の救助犬に育てて多くの現場に出動した。ベアドッグ,アライグマ探索犬,里守り犬など獣害対策犬の指導も行う。
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日本犬の行動特性と問題の予防・修正
~日本犬の素質を生かす飼い方、問題を起こす飼い方~
一般家庭で飼われる犬種は,柴犬系雑種がほとんどだった時代から,洋犬一辺倒の時期を経て,最近は柴犬が常に上位人気犬種になっている。さらに今年は,ロシアのスケート選手に秋田犬が贈られたニュースが繰り返し報道され,秋田犬の飼育者が急増すると予想される。
一方,年頭のテレビ番組では,恐怖性攻撃で咬みつく柴犬に対して激しい体罰を加えるシーンが「愛のムチで“更生”させる」として感動物語に作り上げられて放映された。
日本犬の飼い主から指導を依頼される場合,犬種の特質を知らないまま,見た目や忠犬のイメージだけで飼い始めた事例がほとんどを占める。飼い主がしつけと思ってやっていること,善意でやっている接し方が,互いの関係を悪化させたり,攻撃性や恐怖症を増幅してしまっていることも少なくない。
このような不幸なことが生じないよう,日本犬の特性を踏まえた上で,飼い主の性格も考慮しつつ,どのように指導して行くかについて考えて行きたい。
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奥田順之 (おくだ よりゆき)
獣医行動診療科認定医
ぎふ動物行動クリニック院長
特定非営利活動法人人と動物の共生センター理事長犬猫の殺処分問題・共生問題の解決を目指し、2012年NPO法人を設立。犬と人の関係性の悪化からの飼育放棄を減らすために、田中利幸トレーナー等とともにドッグ&オーナーズスクールONElife設立。2014年ぎふ動物行動クリニック開業。スクール全体で年間約3800回組(のべ数)の犬と飼い主の指導を実施。行動診療としては、年間約100組の新規相談があり、トレーナーと連携した改善を行っている。行動発達にも重要な影響を与える、ペット産業内での繁殖の適正化、社会的責任(CSR)を推進のために、2018年ペット産業社会的責任白書を発行。シンポジウム等を企画し、根本から人とペットの共生問題に取り組んでいる。 |
行動診療における、
トレーナーとの連携した支援の実際と未来
問題行動の相談は、行動診療を行っている獣医師か、問題行動の改善を行っているトレーナーに寄せられることが多い。獣医師とトレーナーは互いに専門性の異なる専門家であり、問題行動の解決には、この両者が協力して取り組むことで様々なメリットが得られる。トレーナーから見れば、問題行動の改善において、鑑別診断を行い、薬物療法の選択ができる獣医師の存在は必要不可欠だろう。獣医師から見れば、飼い主の心理面にも寄り添った改善の支援・励まし・指導、経験豊富な観察眼からの個々の犬の反応・行動に合わせた具体的な支援策の提供を行えるトレーナーの存在は欠くことはできない。本発表では、本格的な連携を行い問題行動の改善に取り組んでいる、当方の事例を紹介し、獣医師とトレーナーの連携の未来について展望したい。 |
福山貴昭 (フクヤマ タカアキ)
危機管理学修士
経歴:
ヤマザキ動物看護大学 動物看護学部 動物看護学科 講師
横浜国立大学 環境情報学府 所属
認定動物看護師
ドッグ・グルーミング・スペシャリスト
サンフランシスコ動物愛護協会ヒアリング・ドッグ・トレーナー修了現在の動物取扱業にあたる両親の下に生まれ、イヌを中心に多くの動物に囲まれて育ちました。約20年前より学校法人ヤマザキ学園で教鞭をとり、現在まで7000人を超えるグルーマー、トレーナー、動物看護師を育成してきました。「今の日本の動物業界に必要なのはスペシャリストより、ジェネラリストだ!」と勝手に考え、専門性やジャンルを超えた活動を展開しています。近年は災害時動物関連問題に対応すべく研究を進めています。著書:
トリーマーのためのベーシックハンドブック(緑書房)
柴犬のひみつ(山と渓谷社)
日本と世界の犬のカタログ2012-2018(誠文堂)等論文:
大学による災害時の地域支援モデル-ペット同行避難ケーススタディ-(2015)
3Rsに基づくグルーミング教育が実習モデル犬に及ぼすストレス負荷の実態調査-ヤマザキ学園大学における事例-(2017)等 |
現場に焦点を当てたトレーニング
~動物看護師、グルーマーが対峙する現場~
一般的な学習理論である報酬の提示と除去でイヌはコントロールでき、正の罰は体罰で副作用しか付随しないという考えをもって、診察台やグルーミング台上のイヌを効果的に安全にコントロールすることが可能でしょうか?ドッグ・トレーナーと異なり動物看護師やグルーマーは、イヌに適切な行動を学習させるための特別な時間を確保することができません。イヌにとって不快な刺激を出現させる立ち位置で、連日数時間イヌを台上に止め、イヌの歯や爪の射程内で作業を遂行します。そして、その作業を遂行する中でイヌに適切な行動を可能な限り効率良く、人道的に、安全に学習させることが求められています。人の管理下にあるイヌは台上のストレスを避けて生きていくことはできません。このストレスを軽減するためには「葛藤状態にあっても攻撃せずに、人に身を委ねられるイヌ」に育成することが必要です。本セミナーでは動物看護師、グルーマーが対峙している現場を紹介し、プロのトレーナーとして対応するためのアプローチを解説いたします。
このセミナーをきっかけにして、クライアントとイヌが暮らす家庭内、クライアントとイヌのお出かけ先以外の「現場」にも十分焦点を当てたトレーニングの導入を展開していただければ幸いです。 |