明治時代の開国と共に欧米の文化が日本に紹介され、模倣されたが、その頃より洋犬と共に欧米的な犬との暮らし方が日本に伝播されていく。従来、日本では犬は忌み嫌われる存在であり、愛護の歴史や犬と暮らす方法については欧米文化導入まで日本にはなかったいう認識がある。
しかし、日本には縄文時代より日本的な犬と暮らす文化があり、しかも日本各地に良好な共存関係が展開されていたのである。
現在、日本では、犬を人の生活に合わせる欧米のトレーニング法が主流になっているが、受け入れられない飼い主がいる。この現象は日本と欧米との動物観の齟齬から生じた問題ではないかと推察される。
そこで、犬に纏わる日本各地の伝説や文献を紐解き、日本における動物観や犬文化を明らかにする。同時にその日本的動物観が現存する一例として、秋田湯沢の犬っこまつりを取り上げ、日本流に犬と暮らすにはどのようにしていけばよいかについて提言する。