飼い主から問題行動の訴えがあった時、行動が生じる仕組みを科学的に考えるなら、その行動に関与している刺激と動機づけを明らかにする必要があろう。もち
ろん問題行動が生じた時点と、飼い主が問題と認識して相談に訪れた時点とでは刺激や動機づけ、さらには反応(行動)自体も多少なり変化しているのは当然のこ
とである。しかし刺激に疾患が関わっており、且つ持続して罹患しているならば、どれほど熱心に行動修正に取り組んだとしても、刺激へのアプローチが全くなさ
れていないのだから、得られる成果は少ない。だからこそ、よくみられる「痛みを伴う疾患」、「ホルモン異常」、「腫瘍」、「脳神経疾患」などによりどのよう
な行動変化が生じるのか、またどのような時に疾患を疑うべきかを学ぶことは不可欠である。本講演では、疾患が関与している問題行動を鑑別する際に役立つポイ
ントや、各種疾患に伴う特徴的な行動変化について論じたい。